42年前の加賀白山の出来事
42年前、私は高校3年だった。
山岳部に所属していた。
白山登山をするために、特に親しい山仲間と2人で6月に学校をさぼって出発した。
当日、山麓でテント張って野宿する予定だったが、なぜかテントを張る場所が見当たらずあるお寺に訪問して境内の隅にテントを張らせてほしいと頼み込むと、住職が中に入って寝なさいと有難いお言葉を頂戴して甘えることにした。
翌日、礼状を書き残して早朝に出かけた。
昼間は天気良く、快適な山行だったことを覚えている。
写真は当時のものではありません、また白山の写真でもありません。
単純に見栄えです。
現在の白山登山ルートの南竜ヶ馬場からトンビ岩のコースを辿っていったと記憶している。
室堂平を通過して、最高峰の御前峰を登頂して新岩間温泉方面に出る。
午後3時過ぎ、テント場として考えていた新岩間温泉へ向かう途中でのことです。
周囲が熊笹に覆われた細い登山道を歩いていた。
新岩間温泉方面から登ってきたと思われる3人組と出会う。
『こんにちは!』と我々は挨拶をしたが全くの無反応だった。
相手はうつむいたままで目を合わせることもなく、そのまますれ違った。
すれ違ってから1分か2分くらい経過していたと思う。
前を歩いていた相棒がいきなり振り返って『あいつらおらんぞ』と私に向かって言った。
私は相棒が何を言っているのか理解できず、聞き返すと『今すれ違ったやつがいない』と我々が辿った道を振り返って怯えたような顔をしていたので、やっと意味が理解できた。
周囲は腰の高さ位の熊笹が生い茂る狭い登山道で周囲の状況はハッキリと分かる場所だった。
しかも狭い一本道があるだけで、周囲にエスケープルートが全く無いところ。
人が歩くと、熊笹が服と擦れてガサガサ音を立てる。
人影は全く無く、熊笹が擦れ合う音も聞こえない。
『おーい』と叫んでみたが反応は全く無し。
『見てもたな』と相棒がひきつった顔で言った事を昨日の事のように覚えている。
この写真も白山ではありません。42年前はカメラは持っていませんでした。
単純に見栄えです。
そして、新岩間温泉に着いたのだが,,,,
当時の2万5千分の1の国土地理院の地図には『新岩間温泉』と記載があるのだが、山小屋のような廃屋があるだけで屋根も無くなっていた。
取りあえず、ここでテントを張ることにした。
夕暮れが迫っており夕食を摂ってすぐに寝ることにしたがなかなか寝付けない。
当然だ、昼間の出来事のインパクトの大きさに恐怖で目を閉じることが出来なかった。
これは相棒も全く同じでトイレ行くにも2人で行った。
この廃屋に、過去に営業していた頃であろう登山客が書き残した宿泊日記が数冊落ちていた。
半分朽ち果てているような感じだったように思う。
楽しい内容ばかりだったが、6月の宿泊日記の記載は無かった。
当時は梅雨の頃に登ってくるのはかなりの変人だったのかも知れない。
真夜中になると雨が降り始めた。
恐怖感が増す夜だった。
ほとんど寝ていない状態で、夜明け前にテントを撤収して下山した。
これが42年前の白山登山での顛末です。
我々が何を見たのか、いまだによく分かりません。
ただすれ違ったはずの3人組の登山者がいきなり見えなくなったという事実を書きました。
今年還暦を迎えるので、もう書いてもいいだろうと思って書きました。
後にも先にも、不思議な出来事はこの一件だけです。
思い出してもいまだに鳥肌が立つ。
- 2名以上
4件のコメント
ちょいちょいあるんですか?? 挨拶しても無言ですか?
ヤマクラブの安曇潤平さん登場ですね。ぞくぞくしてしまいました。
私もちょいちょいあるんですよね。。。あれ、今、すれ違った人・・・ということが。
この経験は忘れられない出来事でした。山の中では色々あるのかもしれませんね。
怖いって言うよりは不思議な気分になりました。
自分はまだそういった類の経験はしていない無いですが、もしかしたら自分が認識してないだけかも…。